女性同士の友情を描いた「クロワッサンで朝食を」

フランス人の朝食はバゲットとコーヒー、紅茶にジャムなど様々ですが、フランス製の代表的なパンで忘れてはならないのがクロワッサンです。
2012年にエストニア出身の新鋭イルマル・ラーグ監督の長編デビューとして製作した「クロワッサンで朝食を」は、そのタイトルに注目する人が多いでしょう。
この映画では朝食に焼きたてのクロワッサンと薫り高い紅茶を味わうのを習慣にしている老婦人フリーダと家政婦アンヌの友情を描いていますが、美味しいクロワッサンの買い方がわかっていないアンヌがフリーダに怒られる場面はフランスの富裕層を連想させます。
フリーダは一日の食事をこの朝食一回で済ませるので、美味しいクロワッサンを食べればその日のエネルギーをチャージ出来るのです。
フランスでは前日の残りの硬くなったパンを飲み物に浸しながら食べるのが好きな人がいますが、彼女は焼きたての軟らかいクロワッサンにこだわります。
長い間高級マンションに一人きりで住んでいたフリーダは同郷のエストニア出身のアンナと衝突しながらも理解を深め、徐々に距離が縮まっていきます。
アンナが朝食に美味しい紅茶とクロワッサンを用意出来るようになった頃にはお互いの境遇を話し合い、絆が強いものになったのです。
一般のフランス人は朝食に時間をかけない事が多く、出来るだけ手間がかからない物を利用しています。
このスタイルにしているのは共稼ぎや独身者に多く、朝食より夕食や週末にゆっくりと食事を楽しみたい人達です。
火を使って調理する物や食後の洗い物を減らせるように、飲み物を飲まない人もいるくらいです。
出来るだけフリーダを演じるのはフランスの大女優ジャンヌ・モロー、アンヌを演じるのはエストニア出身の女優ライネ・マギですが、初共演とは思えないくらい息が合った演技を見せています。
フリーダのファッションはジャンヌと親交があった故ココ・シャネルの洋服で全て自前ですが、黒と白のスーツやカフェオレ色のロングコートを身に着けた姿がパリの風景に誂えたように素敵です。
シャネルの遺品である屏風がインテリアとして置いてあり、紅茶を飲む時に使う白いティーセットなど厳選された物を普段使いにしている所は彼女の生活ぶりの表れだと言っても過言ではないでしょう。