『エスター』は2009年にアメリカで製作されたホラー映画です。
元々の英語の題名は「Orphan」つまり日本語で「孤児」という意味で、
とある家族が施設から引き取った孤児・エスターに日常を侵食されていくというストーリーのサスペンスホラーです。
主人公は数年前に流産で赤ん坊を一人亡くした、二児の母・ケイト。
彼女はその経験から自責の念に駆られ、一時期アルコール中毒に陥っていましたが、
今は回復しています。
ですが、未だ子供を亡くした罪悪感からは逃れられず、夫と相談して、
孤児院から一人の美しく利発そうな少女・エスターを養子に迎えます。
最初は屈託の無い「良い子」として振舞っていたエスターですが、
小学校で自分をいじめた相手を故意に突き落として骨折させる、
ケイトの娘で聴覚障害のあるマックスを精神的に支配するようになるなど、
子供としての立場を利用して暗躍し始めます。
そして、自分の本性を暴こうとする人間を殺害するなど、徐々にその異常性を露わにしていきます。
さらには、自分のことを不審に思うケイトに対して、アルコール中毒の過去を利用して貶め、夫との仲を引き裂こうとするなど陰湿な策略を巡らせていきます。
このエスターという奇妙な少女が平和な一家を陥れていく様子が非常に陰湿に、執拗に描かれていくのがこの映画の醍醐味です。
いったいエスターは何者なのか、どうして少女なのにこれほどまでに歪んだ人格を持っているのか。
そして、彼女の目的は何なのか。
見ればエスターの不穏さに目が離せず、そしてその正体が明かされたときには驚愕することでしょう。
この映画のキャッチコピーは「この娘、どこかがヘンだ」というものですが、
まさに得体の知れないエスターの恐ろしさを凝縮した名キャッチコピーと言えるでしょう。
ギャッと悲鳴を上げたりするホラーというより、どんどん背筋が薄ら寒くなっていく静的な人間ホラーが好きな人におすすめです。