夜の上海

2007年に公開されたこの映画「夜の上海」は日本と中国による合作映画であり、日本側の主演は「おくりびと」で名演技を演じた本木雅弘、そして中国側の主演はヴィッキー・チャオという人気女優でした。この二人の名演技により、この映画は日中国交正常化三十周年の記念作品になったのですが、何と言ってもその面白さは本木雅弘の日本語とヴィッキー・チャオの中国語によるじれったくも切ないコミュニケーションです。

 ヘアメイクアーティスト役の本木雅弘は出張で上海を訪れますが、仕事が終わって夜の上海を散歩しているうちに道に迷ってしまいます。そして必死にホテルを探している時に、女性タクシードライバー役のヴィッキー・チャオが運転するタクシーに軽く接触されてしまいます。そこから二人のジェスチャー中心のコミュニケーションが始まるのですが、台詞でなら簡単な意思疎通を演技力で行い合うところがこの映画の最大の見せ場であり、両主役の演技の素晴らしさなのです。

 最初は歩行者としての注意力の欠如が悪いと主張していたヴィッキーでしたが、本木が迷子であることを知り、一緒にホテルを探してくれることになりました。長い時間をかけて夜の上海をタクシーで探し回るのですが、その間のコミュニケーションによってヴィッキーには片思いの男がいることが分かった本木は彼女の切なさを理解し始めます。そんな本木も長年付き合ってきた彼女とのもめごとのなやみがあり、お互いの心の中にある切なさや葛藤が言葉ではなく演技で伝わってくるのです。最も感動したシーンは、ヴィッキーが片思いの男にお別れに行く事を知った本木が、ヘアメイクアーティストとして最高の腕を振るってヴィッキーを美しい女性に変身させて見送るシーンでした。